『この店は一見さんが入ることは難しい』
誤解しないでほしい。格式の高いお茶屋さんのような一見さんお断りというのではなく、入り口が少しややこしいのだ。
初めて来るお客さんはだいたい正面の格子戸を開けようとするがガタガタいうだけで開かない。実は右にある小さな木の扉からかがんで入るようになっている。
場所は定番観光スポットのひがし茶屋街の一番奥にある、お茶屋の雰囲気を損なうことなく改装して出来た、街並みに溶け込んでいる情緒あふれるお店である。
店内も純和風な造りながら大きなカウンターが広がる居心地のいい空間。お茶屋の名残りを残す一坪の中庭。雪が舞い散る中庭の景色は見事。
そんなお店を切り盛りしているのが、まだ若い女将だ。昔はひがし茶屋街のNo.1芸妓だったらしく、その立ち振る舞いに気品さが感じられる。
店では毎日着物を粋に着こなし、地元の客や観光客わけ隔てなく独特のまったりとした金沢弁で接してくれる。
ワインリストを見ると手頃な価格のものが多い。フランス、イタリア、スペイン、ニューワールド満遍なく揃っている。つまみも良心的な価格だ。
ひがし茶屋街のみならず西茶屋街、主計町茶屋街において雰囲気のあるお店は多々あれど、これほど良心価格なお店はないと思う。
チーズの盛り合わせは3種と5種があるのだが、私が一人のときに頼むと自動的に3種盛りを出してくれる気配り上手な女将。
時々毒を吐いたり可愛くなってしまうツンデレ接客の女将。
頼んだボトルを付き合ってくれる酒好きの女将。前に3本空けたことがあったけど、あなた最低1本は飲んでるよね?そんなとことん飲みたいときにはとことん付き合ってくれる酒豪の女将。
飾らない芸風が持ち味のお店なので間違っても京都祇園の舞妓さん・芸妓さんのような接客は求めないように。
このお店はワインだけではない。女将はワインコーディネーターの資格のみならず、日本酒の利き酒師も持っているのでこだわりの日本酒も味わうことが出来る。ビール、焼酎も揃っている。
帰る時に「お供(タクシー)呼ぶ?」と聞かれるが、とりあえず呼ばない。誰もいないひがし茶屋街をゆったりふらふらと石畳の上を歩く。
昼の喧騒とは違った静かでガス灯のみでほんのり照らされた茶屋街を歩くことが心地いい。
大通りに出てライトアップされた綺麗な梅の橋をぼーっとしばし眺めたらタクシーに乗る。こうして金沢の夜は更けていく。
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ワインバー照葉
住所:石川県金沢市東山1-24-7
電話番号:076-253-3791
営業時間:11:00〜16:00 18:30〜23:00L.O
定休日:日曜祝日
橋場町バス停から徒歩7〜8分
静かな表情をみせる夜のひがし茶屋街。たまにお客を見送る芸妓さんに会える。
ついつい見惚れる梅の橋。
凛とした佇まい。外観はお茶屋そのものである。
気が向くと横笛・三味線などの芸を披露してくれる女将。